B6の断片

言いそこねた何か

東京観光記 一万円のワンピース

 
煮詰まって東京へ遊びに行ってきた。
修学旅行でお台場に行ったのを覗けば今回が初めての東京旅行になる。好きな人、憧れの場所、会ってみたかった人、行ってみたかったところ、日帰りで近県に行ったのを除けば初めて自分のひとりの足でいろんなものを見た。見たものを思い返しては心の中で転がしてベッドの上で転がってるから、私はまだ夢の続きから醒めてないのかもしれない。あの日のレシートはまだ机の端に積まれている。タンスに見慣れない服がある。あのアイコンの中身と私は言葉を交わした。そういうものが今後も私を繋ぎとめてくれるんだろう。それ以上は言葉にする必要もないか。まぁとにかく、良い旅だった。

地元へ帰る日、特に予定もなかったので原宿へ服を買いに行くことにした。原宿自体は日程の中で一度歩いたのだけど、想像以上にリーズナブルで可愛いものに溢れていたのでもう一度行きたかったのだ。
東京は良いところだった。田舎者が降り立ったら足がすくむんじゃないかと不安でいっぱいだったけど、地元にいそうなそのへんの人や個性派トンガリファッションの人やTHEオタクみたいな人が普通に歩いて違和感もなかった。原宿は良いところだった。「竹下通りは服が安いから行くべき」と猛プッシュをくれた友人に流されて良かったと思う。中でも竹下通りは、「あなたの思うCAWAIIで良いんだよ!!!!!」といったくれるエネルギーのある場所だった。もう我慢しなくていいんですね。自分がCAWAIIでなくても、ベタでも、生活に必要のないものでも、私の思うカワイイものでいいんですね。
この通りを現役小中高生で歩くことのできるティーン達に内心嫉妬しながら、でもやっぱり来てよかったなと思った。通りを入れば期間限定ラブライブショップに集うコテコテのライバーとタチの悪い落書きをバックにたむろする黒人がいて、出来の悪いネタpostみたいだった。ごちゃごちゃした通りの中にあるリズリサ*1はあんまりこわくなかった。何者でもそこに居られる無関心の優しさが心地よかった。

東京最終日IN原宿は特に行くところもなかったので、野ばらちゃんの小説で出てきた系統のお洋服様を拝むことにした。単純にどのブランドが好きかなんて考えたこともないし欲しくなるだけ辛いので、うろ覚えを頼りに建物に入った。幸いなことにフリ(ル)フリ(ル)のロリータブランドは拝むだけで済んで、死ぬほど可愛いガーリーなお洋服様の値段タグを見てはビビって逃げて、適当に小物を購入して、新宿に帰るだけのはずだったあたりでふと足が止まった。引き止めたのは店先のバルーンスカートのワンピース。全体的に個性派にカウントされそうな服がならぶ店舗の店先でも圧倒的に面白いシルエットだった。
「観光客だから」の言い訳は無敵だ。気付いたら我慢しきれず手に取っていたし、おかげで背後の店員さんに気付かずにいたし、案の定「試着」の二文字に抗えるはずもなかった。実際に着てみたらもっと可愛くって、ときめきに抗えるはずもなかった。こんなに何通りの着方ができるなんてずるい。こんな面白シルエット見たことがない。神作家の本命CPの直球ストライクの二次創作に泣き崩れたかつての私のように混乱して半泣きになった私は、お値段「18,000円」と聞いて試着室でマジで泣いた。布だぜ!!(BY堂本光一

だって 布だぜ!!!!!!!???????

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いちまんはっせんえん。
普段自分が着るような服の何倍かは、ちょっと言えない。



頑張れば手が出ない値段じゃなかった。でも財布は地元に忘れてきたし*2、通帳を入れたキャリーは帰りの出発地の新宿駅のロッカー¥500に預けていた。当然ながらカードを作る身分証明書もない。だいいち自分の身にまとうものとして考えたら高すぎたし、着る勇気とか着てく場所とか見せる相手(いない)とかを考えたら着られるかどうかはギリギリだった。でもあまりにも可愛くて、面白くて、今後普通に生きてて見ることができないだろう服だった。「新宿駅からなら一駅ですから!閉店まで取り置きもできます!!」「私も田舎から出てきたんで悩む気持ち分かります!!でも好きな人にこの服着てほしい!!」店員からのチヤホヤラッシュに混乱してたら、目の前でお人形さんみたいなお姉さんが試着して別の柄を買ってった。コレ、ほとんど一点ものだってさ。


すみません、泣いて逃げた。



バルーンスカートには憧れがあった。初めてあのシルエットを可愛いと思ったのは杏仁豆腐先生のアイマス画集のMAジャケの萩原雪歩。ジャケットの構図だとよく分からないけど、横に載ってる杏仁先生のラフ画を見て、雪歩なら似合うだろうな(かわいいな)、と思った。未だに雪歩のことはあんまり得意じゃない。私は可愛げに欠けるので、空想の世界でまで素直にかわいいものを愛でるのは抵抗がある。ついでにパニエのもこもこスカート至上主義の私としては、広がって着地するシルエットは少し邪道だし。まぁ雪歩みたいな可愛い子が着たらそりゃあ成り立つってことでよしとするけど……話がそれた。
THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 09 萩原雪歩

THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 09 萩原雪歩

 

 

雪歩と、18,000円の布と、帰宅までの残り時間と、買われるかもしれない危機感と、お洋服へのときめきと、お財布の中身と、夕飯の予定と、電車賃とロッカー代と戻る手間と数日間の疲労と可愛いものに対するコンプレックスとお洋服へのコンプレックスと。いろんなものが煮詰まって、階の端のベンチに腰かけてしばらく項垂れた。その間電池の心もとないtwitterに書き込んでは意味不明なことを垂れ流していた気がする。「好きな子に据え膳されて手出しそこねた敵前逃亡した主人公(仮)の気持ちってこんなんかな……」「脳内で幼馴染(仮)にキッツイ事言われた……つらみ。。。わかり手……ゥチらズッ友……」うざい以上に、世間の主人公(仮)に失礼だと思う。
 



あのあとどう動いたかはあんまり覚えてない。
「31,104円でーす」
 


 
結論から言うと二枚も買った。
しかあも新宿駅まで戻って個別にしてあった現金持って店に戻ったら直前に勧められたワンピースに一目惚れして、もう一度ATMに走るも通帳が使えないと思って外を探すも最終的に店に戻って店員さんについてきてもらってお金を降ろすとかいう珍道中までついてきた。ださい。死ぬほどうざい。幼馴染(仮)に口もきいてもらえないやつだ。

1万のワンピは可愛かった。
シンプルで継ぎ目の少ないバルーンスカートのワンピースで何にでも合わせられる。パッと見は何とも思わないんだけど着てみたらすごく着やすい。おしゃれなパリのおばあちゃんが普段着で着てそうな感じって言ったら伝わるかな。何よりも「一生ワンピース卒業しなくてもいいんだ」と思わせてくれるのがうれしくて、試着から5秒で決めた。

あの時背中を押してくれたのは何だったんだろう。リプライをくれたフォロワーさんかしら。「買えばいいと思うよ!」「着る機会を作ろうと思って行動するやん?」キモいポエム見られた恥ずかしさと構ってもらったのが申し訳なさとありがたさでしばらく沈んでたけど、こんだけ悩むなら買う価値のあるものだと割り切ることにして心を無にして購入した。帰りに聖地のクレープを食べて、また来るぞと誓って薄暗い竹下通りをキャリーにはみ出した荷物満載で帰った。明かりのない竹下通りは、わりと普通の通りに思えた。ありがとう、東京。また来るよ。



地元に帰ってきた私に特に変わりはない。可愛いものが好きで可愛くない私が絶望してるだけ。しいて言えばまぁ、どんな服の店も怖くなくなったくらいかなあ。地元の駅ナカも駅チカも高そうなお店も原宿の店に比べればカワイイものだし。結局あの日、私は一万八千円のでっかいお守りを買ったんだと思う。一生使える一万円の装甲と、とっておきの最終装甲を手に入れたんだと思う。
次来たら、逃げ帰った店のワンピースを買いにいくつもりだ。
 

 

 

※今回はオタクっぽくない話しだけど、自分の「カワイイ観」に関わる話だったので書き納めることにしました。恥ずかしくなったら下げるかも><

 

*1:垢ぬけないオタク女性と絡めて嫌な因縁を付けられることが多いあたりで察してください

*2:地元駅の忘れ物センターにあった。メインの現金+通帳を別にしてたから助かったもののだいぶ寿命が縮んだ